性感染症(STI:Sexually Transmitted Infections)は、性行為を通じて感染する疾患の総称で、クラミジア、淋菌、トリコモナス、性器ヘルペス、梅毒、HIVなどさまざまな種類があります。
女性の場合は自覚症状がないまま進行することも多く、気づかないうちにパートナーに感染を広げたり、不妊や流産の原因となったりすることもあります。
性活動のあるすべての方に関係する疾患です。
代表的な感染症
性感染症にはさまざまな種類があり、症状や感染経路が異なります。
ここでは、当クリニックで診療を行っている代表的な性感染症をご紹介します。
クラミジア感染症
日本で最も多く見られる性感染症のひとつです。女性ではおりものの増加、不正出血、性交痛などの症状がみられますが、無症状のことも少なくありません。進行すると卵管炎や骨盤腹膜炎を引き起こし、不妊の原因になることがあります。
淋菌感染症
クラミジアと同様に感染力が強く、女性ではおりものの異常、下腹部の痛み、排尿時の違和感などがみられます。放置すると骨盤内炎症性疾患に進行し、不妊のリスクが高まる可能性があります。
性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスの感染によって、性器やその周囲に水ぶくれや潰瘍ができ、痛みやかゆみを伴います。初感染時は発熱や全身のだるさを伴うこともあります。ウイルスは体内に潜伏し、疲労やストレスをきっかけに再発することがあります。
トリコモナス腟炎
トリコモナス原虫によって起こる性感染症で、黄緑色の泡状のおりもの、外陰部のかゆみや灼熱感、排尿時の不快感などがみられます。女性だけでなく男性にも感染するため、パートナーも含めた治療が重要です。
梅毒
梅毒トレポネーマという細菌によって起こる感染症です。初期には外陰部や口腔内にしこりや潰瘍ができ、進行すると全身に発疹や発熱、倦怠感が現れることがあります。
早期に適切な治療を受けることで完治が可能ですが、近年は感染者数が再び増加しています。
HIV感染症(エイズ)
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染すると、免疫力が徐々に低下していき、最終的にエイズを発症する可能性があります。初期には風邪のような症状しか出ないことが多く、長期間気づかないまま経過することもあります。早期に感染を把握することが、治療と生活の質の維持につながります。
放置した場合のリスク
性感染症は、自然に治ることはほとんどなく、放置することでさまざまな健康上の影響が生じる可能性があります。
- 感染が子宮や卵管、骨盤内へ広がり、卵管炎や骨盤内炎症性疾患を引き起こす
- 不妊や慢性的な下腹部痛の原因となる
- 妊娠中に感染が判明した場合、流産や早産、新生児への感染リスクが高まる
- 症状が軽い、または無症状でも、体内で感染が進行する
これらのリスクはすべての方に必ず起こるわけではありませんが、感染に気づかず経過することで問題が表面化することもあります。
早期に感染を把握し、適切な治療を行うことで、多くの合併症は防ぐことができます。
診断・検査について
性感染症の診断は、症状や感染の可能性がある状況を丁寧に伺ったうえで行います。
必要に応じて検査を行い、感染の有無や治療の必要性を判断します。
検査方法は、感染症の種類や感染部位、症状の有無などによって異なります。
また、パートナーの感染状況や、症状がない場合の確認目的など、受診理由によって検査内容が変わることもあります。
当クリニックでは、状況に応じた検査をご提案しています。
検査の内容や流れ、費用については、性病検査(性感染症検査)のページで詳しくご案内していますので、あわせてご確認ください。
当クリニックでの治療方針
性感染症の多くは、抗菌薬や抗ウイルス薬などの薬物療法で治療が可能です。
感染が疑われる場合は、まず蔓延を防ぐことが重要です。そのため、積極的な薬物療法を行います。
治療は女性だけでなく、男性側の検査も推奨しています。
特にクラミジア感染は、卵管閉塞や子宮内癒着など、不妊症の原因となるほか、妊娠しても子宮外妊娠のリスクを高めます。
挙児希望がある方に対しては、クラミジア感染の治療に加え、卵管の通過性検査など、不妊の原因を精査してまいります。
