以下は婦人科で代表的な疾患です。
不調は放置せず早期に適切な診断と治療を受けることが大切ですので、どんな些細なことでも気軽にご相談ください。
子宮内膜症・子宮腺筋症
子宮内膜症は、本来子宮の内側にのみ存在するはずの子宮内膜が、卵巣や腹膜などの他の部位に生着し、炎症を引き起こす疾患です。
これに対して、子宮の筋層内に子宮内膜が生着する場合は子宮腺筋症と呼ばれます。
異所性に存在する子宮内膜も、正常な子宮内膜と同様に月経周期に応じて増殖・剥離を繰り返すため、炎症を伴う腫瘤(しゅりゅう)となり、卵巣腫瘍や子宮腫瘍の原因となることがあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は、子宮の筋肉の層に発生する良性の腫瘍で、女性の20〜30%に見られるごく一般的な疾患です。
大きさや数、できる場所によって症状の有無や程度が異なりますが、多くの場合は良性であり、がん化することはほとんどありません。
筋腫は子宮の外側、筋層内、内側(子宮内膜のすぐ下)など、さまざまな部位にできます。
ホルモン(特にエストロゲン)の影響を受けて大きくなるため、閉経後には自然に小さくなることもあります。
子宮頸癌(子宮頸部異形成)
子宮頸癌は、子宮の入口にあたる頸部にできるがんで、前がん病変である「子宮頸部異形成」から段階的に進行します。
主な原因はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの持続感染で、性交渉によって感染します。異形成の段階では自覚症状がほとんどないため、定期的な子宮頸がん検診が重要とされています。若年層での発見も増えており、早期発見・早期対応が鍵となります。
子宮体癌
子宮体癌は、子宮の内側を覆う子宮内膜から発生するがんで、閉経後の女性に多くみられます。
エストロゲンの過剰な刺激が発症リスクとされ、肥満や糖尿病、未出産などがリスク因子とされています。
典型的な初期症状は閉経後の不正出血であり、比較的早期に見つかることが多いのが特徴です。
女性ホルモンと関連が深いため、ホルモンバランスの乱れにも注目する必要があります。
卵巣嚢腫(卵巣癌)
卵巣嚢腫は、卵巣にできる液体や血液を含んだ腫瘤で、多くは良性ですが、大きくなると下腹部の圧迫感や痛みの原因となることがあります。
排卵に関係した生理的な嚢腫(機能性嚢胞)は自然に消失することもありますが、チョコレート嚢胞(子宮内膜症由来)や皮様嚢腫などは長期的な経過観察が必要です。
卵巣はお腹の奥にあるため、悪性の卵巣癌も含め、初期には症状が出にくいことが多く、定期的な検査での早期発見が重要です。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管ポリープは、子宮の入口部分(頸管)にできる小さな突起状の良性腫瘍で、ホルモンバランスの乱れや慢性的な炎症が原因と考えられています。
多くは無症状で、婦人科検診で偶然見つかることがほとんどですが、不正出血や性交時の出血、茶色いおりものが続くといった症状が出ることもあります。
小さいうちは経過観察になることが多いですが、出血が続く場合には処置を行うこともあります。
膣炎(萎縮性膣炎、カンジダ膣炎)
膣炎は、膣の粘膜に炎症が起こる状態を指し、かゆみ、おりものの変化、灼熱感、痛みなどの不快症状を伴います。
萎縮性膣炎は閉経後の女性に多く、エストロゲンの減少によって膣の粘膜が薄く乾燥し、細菌に対する抵抗力が落ちることで発症します。
カンジダ膣炎は真菌(カビ)の一種であるカンジダ菌の異常増殖によって起こり、白くポロポロしたおりものや強いかゆみが特徴です。
細菌性膣症
細菌性膣症は、膣内の善玉菌(ラクトバチルス)と悪玉菌のバランスが崩れ、嫌気性菌が増殖することで発症する疾患です。
性行為や膣内洗浄、抗生物質の使用などが原因となることがあり、灰白色〜黄白色のおりものや魚のような強いにおいが特徴です。
症状は軽度のこともありますが、繰り返す場合には不快感が続き、他の疾患との見分けが必要です。
外陰コンジローマ
外陰コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって外陰部や肛門まわりにイボ状の病変ができる疾患です。
性的接触を介して感染し、免疫が低下しているときに発症・増殖しやすくなります。
見た目に特徴があるものの、痛みやかゆみなどの自覚症状が乏しい場合もあります。放置すると広がる可能性があるため、注意が必要です。
性感染症
性感染症(STI)は、性行為を通じて感染する疾患の総称で、クラミジア、淋菌、トリコモナス、性器ヘルペス、梅毒、HIVなどさまざまな種類があります。
女性の場合は自覚症状がないまま進行することも多く、気づかないうちにパートナーに感染を広げたり、不妊や流産の原因となったりすることもあります。
性活動のあるすべての方に関係する疾患です。
過活動膀胱
過活動膀胱とは、自分の意思に関係なく膀胱が収縮してしまい、急に強い尿意を感じたり、トイレが近くなったりする症状を指します。
尿意を我慢できず漏れてしまう「切迫性尿失禁」を伴うこともあり、生活の質(QOL)に大きく影響する疾患です。
加齢や骨盤底の筋力低下、ホルモンの変化、ストレスや自律神経の不調などが関与すると考えられています。
子宮脱
子宮脱は、骨盤底の筋肉や靭帯が緩み、子宮が腟の中、または外へ下がってきてしまう状態です。
加齢、出産経験の多さ、慢性的な便秘や咳などで腹圧がかかることが原因とされます。
腟の中に何かが触れる感じや、違和感、排尿・排便のしづらさなどが症状として現れることがあります。
月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)
PMSは、月経の1〜2週間前に現れる心身の不調で、月経が始まると自然に軽快するのが特徴です。
頭痛、むくみ、眠気、情緒不安定、イライラなど多岐にわたります。
その中でもPMDDは、気分の落ち込みや怒り、不安など精神的症状が強く、日常生活に支障をきたすレベルの状態を指します。
女性ホルモンの変動やストレス、神経伝達物質の関与が指摘されており、心理的なサポートも重要とされています。