子宮脱について

子宮脱は、骨盤底の筋肉や靭帯が緩み、子宮が腟の中、または外へ下がってきてしまう状態です。
加齢、出産経験の多さ、慢性的な便秘や咳などで腹圧がかかることが原因とされます。
腟の中に何かが触れる感じや、違和感、排尿・排便のしづらさなどが症状として現れることがあります。

主な症状

子宮脱の症状は、進行度や生活動作によって異なりますが、以下のようなものがよく見られます。

  • 腟の中に異物感がある(下垂感)
  • 立っているときに腟の出口から何かが出てくる感じがする
  • 長時間歩いたり、立っていると症状が強くなる
  • 排尿しづらい、残尿感がある、尿漏れ
  • 排便がしにくい、力まないと出にくい
  • 性交時の違和感

症状が軽いうちは気づきにくいこともありますが、進行すると腟の外に子宮の一部が見えることもあります。日常生活に支障が出る前に早めの診断が重要です。

診断方法

当クリニックでは以下の方法で診断を行っております。

問診・診察

まずは、日常生活での違和感や症状の程度、出産歴や便秘・慢性咳などの既往について丁寧にお伺いします。
そのうえで、診察台での内診に進みます。

内診による観察

膣内を診察し、子宮の下がり具合や腟壁のたるみ具合を確認します。
いきんでもらうことで脱出の程度を確認することもあります。視診と触診の両方で進行度を評価します。

重症度の評価(ステージ分類)

必要に応じて、子宮脱の重症度を段階的に分類するPOP-Q(ペルビックオーガンプロラプス定量化システム)を用いて評価することがあります。
日常生活への影響や今後の治療方針の参考になります。

当クリニックでの治療方針

川越レディースクリニックでは、子宮脱の程度や症状の強さ、患者さまのご年齢やご希望に応じて、以下のような治療を提案しています。

骨盤底筋体操(ケーゲル体操)による筋力強化

骨盤底筋体操は、骨盤内の臓器を支える筋肉を鍛えることで、子宮の下垂を防ぎ、軽度の子宮脱の改善に役立ちます。
日常生活の中で無理なく取り入れられる運動で、姿勢や呼吸を意識しながら行うことが重要です。

継続することで、排尿や排便のコントロールにも良い影響が期待できます。
当クリニックでは、正しいやり方をわかりやすくご指導いたします。

生活習慣の見直し(便秘の改善、咳のコントロールなど)

子宮脱の原因となる腹圧の増加を抑えるため、生活習慣の見直しも大切です。
慢性的な便秘や激しい咳、重い荷物を持つ習慣などが骨盤底に負担をかける要因となります。

要因 影響 対策例
慢性的な便秘 排便時に強くいきむことで腹圧上昇 食物繊維・水分・適度な運動
慢性の咳 咳のたびに腹圧がかかる 原因疾患の治療・加湿
重い物の持ち上げ 腹部に強い力が入る なるべく避け、荷重分散する

排便習慣の改善や、咳の原因となるアレルギー・呼吸器症状の管理などを一緒に検討し、負担の少ない生活をサポートします。

ペッサリー(腟内に挿入するリング状の器具)による支持療法

ペッサリーは、子宮の下垂を腟内から支える医療用器具で、外来での簡単な処置で挿入することができます。
症状の軽減が期待でき、手術を希望しない方や手術が難しい方に有効な選択肢です。

定期的な取り換えや洗浄が必要ですが、痛みは少なく、日常生活への影響も少ないため、多くの患者さまにご利用いただいています。
ご希望に応じて、サイズや形状の調整も行っております。

なお、重度の子宮脱や日常生活に大きく支障がある場合は、連携する医療機関での手術療法(腟式子宮摘出術・支持靭帯修復など)をご紹介することも可能です。

腟に何かが触れる感じがある、長時間の立ち仕事や外出がつらいなど、気になる症状がある方は、どうぞ早めにご相談ください。